Description
信仰の6柱の1つである最後の日への信仰についてのあらまし、死後墓の中で受ける試練や享楽、懲罰について見て行きます。
● 最後の日(アル=ヤウム・アル=アーヒル)とは:審判の日のことで、アッラーはその日現世での行いの清算と報いのために、被造物を復活させます。この名称の由来は、その日が天国の住民は天国に、地獄の住民は地獄に定着するという最後の日(アル=ヤウム・アル=アーヒル)であることによっています。
● よく知られている最後の日の別称:
審判の日。復活の日。(人々が天国と地獄に振り分けられる)分断の日。(墓からアッラーの御許への)出発の日。報いの日。永遠の日。清算の日。恐怖の日。集合の日。騙しあいの日。会同の日。互いに呼び合う日。嘆きの日。大音響。この上ない災難。(人々の顔をその恐怖と不安により)暗く陰らせるもの。必ず起こるもの。明らかな真実。(その恐怖によって人々の心や耳を)叩きつけるもの。
● 最後の日への信仰とは:
アッラーとその使徒が伝える復活、召集、清算、地獄の架け橋、(清算の)秤、天国、地獄といった、偉大な審判の日に人々が呼び戻された地で起こるもの全てを確固として信じることです。そして審判の日の諸々の予兆としるし、また死後の墓の中における試練、墓の中の懲罰や安寧といった事柄も最後の日への信仰の中に内包されます。
● 最後の日の偉大さ:
アッラーへの信仰と最後の日への信仰は、イーマーンの基幹の中でも最も偉大なものです。この2つはその重要さゆえにクルアーンの中で幾度も繰り返し並列して言及されており、また人間の現世と来世における正しい方向性と真の成功と幸福は、ひとえにこの2つと残りのイーマーンの基幹にかかっています。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-これこそは、アッラーと最後の日を信仰する者が訓戒とするものである。,(クルアーン65:2)
2-至高のアッラーはこう仰られました:-アッラーはかれの他に真に崇拝すべきもののないお方。かれは必ずやあなた方を、疑念なき審判の日に召集されるのだ。,(クルアーン4:87)
3-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてもしあなた方が何かで争ったときには、(その判決を)アッラーと使徒に委ねるのだ。もしあなた方がアッラーと最後の日を信仰しているのなら。,(クルアーン4:59)
● 墓の中での試練:
1-アル=バラーゥ・ブン・アーズィブ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私たちは葬儀の礼拝のため、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)と出かけました・・・‐そしてその中で預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“そして彼(死者)のもとを2人の天使が訪れる。そして彼を座らせ、こう尋ねるのだ:「あなたの主は誰ですか?」彼は答える:「私の主はアッラーです。」それから2人は言う:「あなたの宗教は何ですか?」彼は答える:「私の宗教はイスラームです。」そして2人は尋ねる:「あなた方に遣わされたものは誰ですか?彼は言う:「それはアッラーの使徒です・・・」"」(アフマドとアブー・ダーウードの伝承[1])
2-アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「しもべは墓に埋葬され、人々が彼のもとを立ち去った時、彼らの足音を聞く。そして2人の天使が彼のもとを訪れ、彼を座らせて尋ねる:“この男ムハンマドについて、あなたは何を言っていたのか?"すると(彼は)言う:“私は彼がアッラーのしもべであり、使徒である事を証言します。"それから彼はこう言われる:“見よ、アッラーがあなたにご用意された地獄の居場所と、天国の居場所を。"」[2]そして預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「そして彼はその両方とも目にするのだ。
一方不信仰者と偽信者は(件の問いに対して)こう言う:“知りません。私は人々が言うように言っていただけです。"すると彼はこう言われる:“あなたは彼を知りもしなければ、従いもしなかったのだ。"そして両耳の間を鉄のハンマーで1発打たれる。彼は叫び声を上げるが、その声はその近辺にいる人間とジン(精霊的存在)以外の全ての者が耳にする。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[3])
墓の中の懲罰には2種類あります:
1-審判の日まで継続する懲罰:これは不信仰者と偽信者に対するものです。至高のアッラーはフィルアウン(ファラオ)の一族に対し、こう仰られました:-(それは)彼らが朝に夕に晒される業火。そして審判の日には、(アッラーが天使たちにこう命じられて言われる)「フィルアウンの一族を最も過酷な懲罰の中に投げ込むのだ。」,(クルアーン40:46)
2-期間が限定され、その後中止される懲罰:これは罪深かったタウヒード[4]の徒に対してのもので、その罪の程度によって罰されます。それから罪は軽減され、アッラーのご慈悲によって中止されます。もしかするとその中止の原因は、彼が現世において施した死後も継続する慈善行為[5]や有益な知識、また死後に彼のために祈る敬虔な子供などによるものかもしれません。
● イブン・ウマル(彼にアッラーのご満悦あれ)によればアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「あなた方は死後、(墓の中で)朝に夕にその(来世での)居場所を提示される。もし天国の住人であれば天国の住人の(居場所を)、地獄の住人であれば地獄の住人の(居場所を提示され)、“これが審判の日、アッラーがあなたを復活させられるまでのあなたの居場所である。"と言われるのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[6])
● 墓の中の享楽:
墓の中の享楽は信心深い信仰者のためのものです。
1-至高のアッラーはこう仰られました:-「私たちの主はアッラーです。」と言って真理に沿って歩む者たちには、(その死後)天使たちが舞い降りてこう語りかける:“(来世での行く末について)恐れる事も、(過ぎ去った事について)悲しむこともありません。あなた方が約束されていた天国のよき知らせに心躍らせなさい。" ,(クルアーン41:30)
2-アル・バラーゥ・ブン・アーズィブ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は、墓の中で2人の天使に正答する信仰者についてこう言いました:“・・・すると天から彼を呼ぶ声がする。「わがしもべは本当のことを言った。彼に天国の居場所を用意し、天国のものでもって着させ、天国への扉を開けてやるのだ。」"そして預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言った:“すると彼のもとに芳香が漂い、彼の墓は見渡す限りにまで広げられる。"」(アフマドとアブー・ダーウードの伝承[7])
● また信仰者はアッラーの道における殉教や前線や国境線での守衛や奮闘、また腹部の病による死などによって、墓の中での恐怖や試練、懲罰などを回避することがあります。
● 死後から審判の日までの魂の居場所:
魂はそれぞれ非常に異なる状態において、天国と地獄の境界にあります。預言者たち(彼らにアッラーからの祝福と平安あれ)の魂のように天界高くにあるものもあれば‐そして彼ら自身の間でも、その位階は異なっています‐、信仰者の魂のように天国の木々に鳥の姿でとまっているものもあります。
また殉教者たちの魂は、天国を飛び回る緑色の鳥のそ嚢(鳥類や昆虫類の食道後端にある袋状部)にあります。
また戦利品をごまかして盗んだ者の魂のように墓に拘束されたものや、残した借金ゆえに天国の扉の前で動けなくなっているもの、その位階の低さゆえに地上に留ませられているものもあります。
また姦淫を犯した男女の魂は、炉の中にあります。
また不法な商取引によって得た利をむさぼる者たちの魂は、血の河を流れ、そこで石を飲ませられます。
[1] 真正な伝承。ムスナド・アフマド(2417)、アブー・ダーウード(3753)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(3979)。文章はアブー・ダーウードのもの。
[2] 訳者注:アフマドの伝承では“地獄の居場所"について、「もしあなたがあなたの主を信じていなければ、これはあなたの居場所であったのだ。」という文章がある。
[3] サヒーフ・アル=ブハーリー(1338)、サヒーフ・ムスリム(2870)。文章はアル=ブハーリーのもの。
[4] 訳者注:詳しくは「1.タウヒードとタウヒードの種類」の章を参照のこと。
[5] 訳者注:つまりアッラーからの報酬を願って財産を固定化し、そこから生じる利益を施しとすること。詳しくは「ワクフ」の項参照。
[6] サヒーフ・アル=ブハーリー(1379)、サヒーフ・ムスリム(2866)。文章はムスリムのもの。
[7] 真正な伝承。ムスナド・アフマド(18733)、スナン・アブー・ダーウード(4753)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(3979)。文章はアフマドのもの。